8月2日(土)の開会式で始まった2008世界アルティメット&ガッツ選手権もいよいよ最終日を迎えてしまった。
この最終日にプレーできるチームは、オープン3位決定戦の日本とイギリス、ウイメン決勝戦の日本とアメリカ、オープン決勝戦のアメリカとカナダ、そしてミックス決勝戦の日本とカナダのわずか8チームのみ。
この中にミックス日本代表チームの名前があり、そのチームをコーチさせてもらえることは、非常に幸せなことだ。
思い起こせば、初めてミックス日本代表の練習に参加したのが、2008年の1月だった。そこからまるまる7か月。
あっと言う間と言えば、そうだったし、長かったと言えば、そうかもしれない。
とにかく、自分のアルティ人生の中でも、もしかしたら二度と経験できないほどの舞台だと言うことは確かだ。
又、ここに来るまでの選手達の頑張りを間近で見てきたので、何とか良い思いをさせてあげたい、という思いが非常に強い。
オープン3位決定戦で接戦の末、日本が銅メダルを獲得したものの、ウイメン決勝戦では日本はアメリカに逆転で敗れて順優勝。そして、午後1:30から満員のスタジアムでミックス決勝戦はスタート。
もちろん地元カナダの観客が圧倒的な人数を誇るのだが、日本選手団も数は少ないながらも団結力で存在感を示していて、非常にありがたく、心強い。
試合前のミーティングでは、コウイチキャプテンから「結果を恐れずこの舞台を楽しもう!」と声がかかる。
そして、両チームのスターティングメンバーが一人一人場内アナウンスされ、ハイタッチでフィールドに送り出される。
いよいよ観客の盛り上がりは最高潮だ。
自分は場内アナウンスの途中からフィールドに入り、ディフェンスメンバーと戦術と相手プレーヤーの確認を行う。
これまでやってきた通り、まずはマンツーマンで相手にプレッシャーをかける作戦だ。
相手はポイントゲッターの98番がいない以外はメンバーは予想通り。
(ただ、この小さな事実は後で振り返ると大きな意味を持っていたということに後で気づくのだった)
最初のプレーは、相手のハンドラーのキーマン(16番)からのロングシュートでカナダがキープ。やはり彼を抑えないと厳しくなると実感。
日本 0-1 カナダ
そして、次の日本のオフェンスで相手の異変に気づく。
相手のポイントゲッター98番とウイメンのキーハンドラー18番(2009WGカナダ代表に選出)がディフェンスに入っている。
ポイントゲッターをディフェンスに回してでも、日本のオフェンスを止めるというのが、カナダの作戦だったのだ。
そして、ディフェンスは超ハード。
マーカー(ストリーング)がタイトで楽にパスを出させてくれない。
ハンドラーには全てを止めにいく感じで付いてきて、ディスク回しが苦しい。
レーンカッター(ミドル)は、ミートを抑えられて、さらにハンドラーが厳しくなる悪循環。
苦しい中、ダンプのコミュニケーションミスでターンオーバー。
しかし、ゴール前のナイスディフェンスでディスクを取り返す。
だが、カナダのディフェンスのハードさは変わらない。
ミートが抑えられる中、ロングを狙うが、カナダの高さの前にインターセプトされてしまう。
そして、そのディスクを繋がれ、最後はゴールのエンドラインぎりぎりのところへのロングシュートを相手の20番にキャッチ&つま先でインされ、ブレイクを許す。
(結果的に、この試合のキーマンは20番だったと後で分かる)
日本 0-2 カナダ
引き続き、カナダのハードなディフェンスが続く。
とにかく、予選リーグの時よりもマーカー(ストーリング)が凄くタイトで、ファールを恐れずガンガン来る。
苦しい日本のオフェンス。
ミートを抑えに来ているのでロングを狙うも、少し短くカットされターンオーバー。
ディフェンスで粘るも20番のロングスローで打開されてしまい、
最後はゴール前からのパスをダイブキャッチで連続ブレイクされる。
日本 0-3 カナダ
ここで迷わず日本はタイムアウトをコール。
一息ついて、相手に傾いている流れをストップしようと試みる。
オンフェスメンバーも少し入れ替える。
しかし、カナダのファールを恐れないハードなディフェンスは変わらない。
一本目の厳し目のインサイドパスが通らず、ターンオーバー。
ゴール前の相手のオフェンスはパスがフワリと浮くも、エンドラインぎりぎりで98番にキャッチされてしまう。
日本 0-4 カナダ
ここで、オフェンスメンバーを大幅に入れ替え、普段、ディフェンス中心のメンバーを多く出す。
リズムを変えるのも目的だが、相手に取っては、違うプレースタイルの選手達が出てくることで、守りに難くなるはずだ。
何より、ミックス日本代表チームはメンバーの誰が出ても、最初のオフェンスメンバーと遜色の無い攻撃が出来る層の厚さが強みだ。
相手のディフェンスは相変わらずハード。ファールもあり、日本の特徴である、テンポの良いディスク回しがなかなかできない。
厳しいながらも、お腹を負傷(帰国後で肋骨にヒビが入っていることが判明)しているオギの懸命のダイブキャッチなどで、パスを繋ぎ、ロングシュート!
しかし、このパスがディスク1枚分長く、エンヅがダイブするも、ぎりぎり届かない。
そして、相手の攻撃はまた20番のロングスローで打開されてしまう。それでも、日本は粘り、一度はカット!・・・と思いきや、こぼれ球を20番に拾われてしまう。最後はまた98番にキャッチされ、4連続ブレイク。
日本 0-5 カナダ
相手のディフェンスはハードだが、その後のオフェンスは決して良いとは言えないにも関わらず、ギリギリのところを全て繋いで来る。これがカナダの球際の強さ・勝負強さ・集中力なのか。
ここまで来ると、メンバー選定に戸惑ってしまう可能性もあったが、予選リーグのカナダ戦で相手に5連続ブレイクされた時の反省があったので、そこはクリアできた。
もう一度、スタート時のオフェンスメンバー中心に戻す。
とにかく、何とか一点を取りたい。
男女うまく連動して、短いパスで少しずつゲインするも、少しマイナスに入ったスローをダイブカットされてターンオーバー。
そして、そのディスクを繋がれ得点されてしまう。
日本 0-6 カナダ
ここで2回目のタイムアウトをコール。
地元の大歓声に後押しされたのかカナダの集中力が本当に素晴らしい。
際どいディスクは全部カナダが持って行ってしまう。
キャプテンから再び「この舞台を楽しもう!」と声がかかる。
メンバーに、ディフェンスメンバーを何人か入れて、何とか流れを変えようと試みるとこれが的中。
オフェンスメンバーとディフェンスメンバーがうまく融合し、ブレイクサイド(裏)への展開とインサイドのスペースをうまく使うことが出来て、ついに日本が得点!!!
日本 1-6 カナダ
ここから一気に畳み掛けたいところ。
キーマンの16番だけマンツーマンで付く、変則ゾーン(ボックスワン)で勝負に出る。
相手はいつも起点になる16番がディスクに絡めないので、やりにくそうだ。
大きく打開するスローが無く、パスの数が多くなっていて、日本の思惑通り。
そして、対角線への長めのハンマー(アップサイドダウン)スローでゴールを狙う。
これも、日本の思惑通りだ。
少し浮き気味のスローに対して、大輔が猛然とプレッシャーをかける。
ディスクを待つカナダのウイメンプレーヤーはその圧力に押され、キャッチミス!
と、思いきや、弾いたディスクが落ちるギリギリのところで、ダイブキャッチ!!
日本としては、ディフェンスは成功しているに限り無く近いのだが、ことごとく際どいのを取ってくる。
日本 1-7 カナダ
しかし、時間をかけさせたので、オフェンスメンバーはひと息つくことができた。
落ち着いて臨んだオフェンス。相手の隙をついて、裏からのロングスローを狙うもほんの少しだけ長くて通らない。
5点目のエンヅのダイブもそうだが、日本はあと少しのところでターンオーバーになり、逆にカナダはそういうところでもディスクが繋がっている。
しかし、ここでミナのスーパーディフェンスが炸裂。
相手のハンドラーへのパスをゴール内でダイブキャッチ。
キャラハンゴールだ!
これには相手の応援のはずの地元カナダの観客も大歓声。
少し点差をつけられ、少し元気なかった日本代表チームも一気に盛り上がる。
日本 2-7 カナダ
この盛り上がりに乗じて、一気に点差を縮めたい。
マンツーでガチの勝負にいく。
ここで、それまで抑えていたキーウーマン66番のロングスローが出る。
しかし得意なフォアは抑えているので、バックハンドだ。
狙い通り、精度はあまり良くなく、浮いたスローとなる。
ディフェンスも追いつき、競り合いだ。
しかし、ここでもカナダの勝負強さを発揮される。
3・4人で競り合いながらも、カナダのプレーヤーがしっかりキャッチ。
日本 2-8 カナダ
なかなかブレイクのチャンスが来ない。辛抱の時だ。
一方、オフェンスは落ち着きを取り戻し、本来のテンポの良いディスク回しが出て、ブレイクサイドをうまく使えて、キープに成功。
日本 3-8 カナダ
前半が終わる前に何とか、1点でも点差を縮めたいところ。
さっきマンツーをしかけたことを考慮し、また16番へのボックスワンにしてリズムを変えることを狙う。
しかし、少し慣れてきたのか16番無しでも、リズムよく繋がれ、キープされてしまい、前半終了。
日本 3-9 カナダ
ハーフタイム。
コウイチキャプテンより、みたび「この舞台を楽しもう!」と声がかかる。
自分としては、選手を信じるのみ。
とにかく、何とか1ブレイクして、そこから突破口を見つけたい。
マンツー・ゾーンをいろいろ駆使して相手のほころびを狙っていきたいところ。
後半は、日本のオフェンススタート。
ブレイクサイドを狙うも相変わらずディフェンスにも出てくる18番にインターセプトされてしまう。
しかし、相手のスローミスで再びオフェンスに。
ブレイクサイドとインサイドを使いキープ。
相手は勝負に来ているので、押さえて無い方をうまく使えると楽にパスを回せる。
日本 4-9 カナダ
ここでブレイクできると後半開始2連続ポイントとなり、相手も少し慌てる可能性がある。何とか取りたい。
選択はマンツー勝負。
しかし、ここでも16番のロングスローで打開され、最後はタイムアウト後のハンマーでキープされる。
悔しいが強い。勝負どころではミスを絶対にしない。
日本 4-10 カナダ
そして、キープが続く均衡状態を打ち破ったのは、カナダのディフェンスだった。
ダンプパスをブロックし、ターンオーバー。
ゴール前でのオフェンスを1本で決め、カナダがブレイク。
日本 4-11 カナダ
再び厳しくなってくる日本のオフェンス。
スペースのある奥にシュートを打ち込むが、あとちょっとのところで20番にカットされる。
そしてそのディスクを20番がロングパスし、98番がキャッチ。
ディフェンスで粘るも苦し紛れのスクーバーを98番がキャッチ。
さらにディフェンスが粘るも、完全にミススローのアップサイドを98番が高さを生かして、競り合いながらもキャッチ。
日本 4-12 カナダ
悔しいが、カナダは本当に勝負強い。
何度も言うが、際どいディスクは全てカナダが奪っていく。
綺麗な形で取られたとか、ディフェンスが完全に崩されたとかは、ほとんど無いのだが、点差が開いていくのだ。
引き続き、カナダの激しいディフェンス。
相手も疲れて来たのか、何度もファールをするようになる。
日本のオンフェスも何とか繋ぎ、エイジからのロングシュートをミナがダイブキャッチ!
日本 5-12 カナダ
今度こそ、ブレイクしたいところ。
再び、マンツーで1対1の勝負をしかける。
そしてついにターンオーバーに成功。
ハンドラーへのパスをインターセプトし、そのまま難なく得点。
待望の初ブレイクだ!
日本 6-12 カナダ
連続ブレイクと一気に畳み掛けたいところ。
ここはマンツーしかない。
しかし、またまた16番のロングシュートで決められてしまい、流れを止められてしまう。
日本 6-13 カナダ
こちらのオフェンスも負けじとエイジがロングシュート。
しかし、日本はゴール内で痛恨のキャッチミス。
だが、#98へのロングパスをタケシがカットし取り返す。
と思ったら、#98がファールコールをしてワンバック。
再び、#98へのロングパスが来て、今度はタケシの文句無しのブロック!
パスを繋いで、カワシマがタケシへロングパスも少し長く通らない。
ここで、日本の鉄壁のディフェンスが出る。
散々やられていた20番をキミが抑え込み、一本目のパスでミスを誘う。
ゴール前を難なく1本のパスで得点。
日本 7-13 カナダ
ここで、この試合初めての1-3ゾーンをしかける。
フワリと浮くハンマースローを誘いだすものの、カットには至らず、カナダがキープ。
日本 7-14 カナダ
この試合、ずっとマンツーの相手に対し、ミナのロングパスで相手を崩し、ノーターンオーバーでキープ。
ミナに限らず、日本はウイメンが良くディスクに絡むのが特徴だが、ようやく、それが綺麗な形で出てくるようになった。
日本 8-14 カナダ
ゾーンでは一度のブレイクできてないので、マンツーをしかけも、まるで日本チームの様に、ブレイクサイドとインサイドをうまく使われキープされる。
日本 8-15 カナダ
ここでカナダはこの試合初めてのゾーンディフェンス。
日本は落ち着いて左右にディスクを回し崩していく。
だが、ゴール前にトランジションでマンツーになったところで、ダイブブロックされ、ターンオーバー。
ロンブパスを通された後、諦めずに次のパスをカット!
と思いきや、こぼれ球をまた拾われてしまい、結局ブレイクされる。
ここまで来ると、そのカナダの集中力は凄いというしかない。
いいディフェンスだったのだが・・・。
日本 8-16 カナダ
ついに相手がマッチポイントを握る。
あと1点ということで気合が入ったのか、カナダ20番の最高のスローオフが滞空時間を稼ぎながら、ゴール内エンドラインぎりぎり1mに落ちる。
ディフェンスのダッシュも早くディスクを拾った時には、全ての選手にディフェンスが付いている状態。
苦しみながら出した厳しいパスを日本は弾いてしまう。
そして、その浮いたディスクをカナダのディフェンスがゴール内でダイブキャッチ!!!!!!!!!!
なんと、キャラハンゴールでゲームセット。カナダの優勝だ。
最高の終わり方に、もちろん満員の地元バンクーバーの観客は大歓声。
日本 8-17 カナダ
呆然とする日本の選手達。涙を流す選手もいた。
自分も自然と込み上げてくるものがあり、目頭が熱くなる。
これが勝負だ。悔しいが今回はカナダの方が強かったということ。
しつこいが、際どいディスクは全部カナダが取っていた。
一つ一つのプレーは小さいがそれが積み重なって結果となったのだ。
しかし、日本選手は胸を張って良いと思う。
ミックス部門では過去最高(タイ)の準優勝。
ここ最近の世界大会ミックス部門のでの苦戦をふまえて掲げていた銅メダルという目標以上の色を獲得することができたのだ。
自分はコーチという立場であったが、基本はコウイチキャプテンが先頭に立ってチームを引っ張る選手中心のチームでまとまりは最高だった。
全ての選手が大なり小なりの役割を持ち、チームに欠かせない存在だった。
トレーナーのテラマチくんとユカリは連日深夜まで懸命の鍼治療やマッサージを行い、日中も選手を注意深く見守っていて、最高のサポートを行ってくれていた。
モコちゃん(自分の奥さん)のオニギリ作りなどのサポートも非常にありがたかった。
人数では圧倒的に負けているのだが、その統率力と声の大きさでは決して負けていなかった観客席からの応援は非常に励みになった。
こんな素晴らしいチーム、メンバー、スタッフ、サポート、応援の中で、微力ながら仕事をさせてもらえたことに、感謝したい。
言葉では、決して言い表せないほどの、大きな感謝の気持ちを敢えて一言で伝えたいと思う。
全てのひとに、ありがとう。
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WUGC2008ミックス日本代表の結果http://www.wugc2008.com/team/509