実は、アルティメットチャレンジャーは中学校では卓球部。
1991年に出身地である千葉の幕張メッセで世界選手権が開催された時にはボールボーイを務めた事もある卓球少年だったのだ。
今大会では、エースの福原愛選手が負傷欠場する中、新エースの石川佳純選手、ベテラン平野早矢香選手が奮闘し、ロンドン五輪に続く銀メダルを獲得した。
全試合3-0で完全優勝した中国をはじめ、シンガポール、韓国、と言った強豪が全てトーナメントの逆ブロックに入るなど組み合わせでの幸運や、地元の大声援の後押しを受けての準優勝だった。
ただ、一つ一つの試合を見ると、真剣勝負というのはやってみるまで分からない、終わってみるまで分からない、と改めて実感した。
準々決勝でオランダと対戦した日本は、5番手までもつれ込んだ接戦で、世界ランク9位の石川選手が、はるか格下のエールランド選手に大苦戦。
セットカウント2-0とリードを奪いながら、2-2まで挽回され、最後は3-2で薄氷の勝利であった。
恐らくだが、石川選手は2-0というセットカウントで、勝利を意識したのでは無いかと思う。
しかし、アルティメットでも同様だが、そういう時ほど、実は注意が必要なのだ。
日本代表の村上監督は、石川選手について、
「自分より上の選手には向かっていけるが、格下の相手とやると、何でこんなボールが入らないの?と自分でイライラしてしまってプレーをおかしくしてしまうところがある」
と話していたことがあるらしい。
これもアルティメットと同じだ。
格上と目されるチームが、格下のチームに苦戦、又は、敗戦してしまう事や良くあるが、こういう精神状態が原因のことが多い。
この試合で、勝利を決めた直後の石川選手の涙は、彼女が感じたプレッシャーを良く現している。
逆に、準決勝の香港線の3番手、平野選手はセットカウント0-2、ポイント4-9というあと2点取られたら負け、という絶対絶命のピンチを凌ぎ、3-2で大逆転勝利を収め、4番手の石川選手へ繋ぎ、最終3-1での日本の勝利を導いた。
この試合では、相手選手が勝利を意識してしまい、挽回された時に歯車が狂ってしまったのだろう。
(もちろん平野選手の集中力も素晴らしかった)
ランキングや実力の評価というものは、過去の試合から導き出されたものだから、その試合には全く関係ない。
その日の調子もあるだろうし、その時の精神状態も勝敗に関係してくるのだ。
選手として一番大切なのは、そういったものに囚われず、目の前の相手を倒すべく、常に集中することなのである。
これはアルティメットでも全く同じことが言える。