2012年08月16日

スピリット・オブ・ザ・ゲームを考える〜日本vsカナダ戦を見て〜

アルティメットというスポーツではスピリット・オブ・ザ・ゲーム(SOTG)が尊重される。

それゆえ、ルールブックの一番最初の条文にはこう記載されている。

『アルティメットは、接触禁止、セルフジャッジ制を用いた競技スポーツであり、すべての選手は
ルールに忠実でなければならない。アルティメットは、「スピリット・オブ・ザ・ゲーム」という各選
手の責任感あるフェアプレイのもとに成り立っている。』

先月に行われたWFDF2012世界アルティメット&ガッツ選手権の日本vsカナダ(オープン)の試合は、世界的にこのSOTGについて議論を巻き起こすこととなった。

日本vsカナダ戦フル動画


アルティメットチャレンジャーも今まで後で振り返るとSOTGに反していたと後悔されるプレーもしているので偉そうなことは言えないが、この試合の映像を見て、思うところがあったので、自戒を込めて、気付いたことを書きたい。

まず、facebookやRSD No Spamという英語掲示板やULTIWORLDの記事でこの議論を知ったのだが、大抵の人の意見としては、カナダのプレーや態度がひどいということ。

問題となっているカナダのプレーについては、ここここを。

公正を期すために、言っておくと、少数派ではあるが、日本のプレーが原因となって、カナダのひどいプレーが誘発された(それでもカナダのプレーが正当化される訳ではないが)と言っている人もいる。

その人達があげているプレーはこれこれ

個人的な感想から言うと、問題となっているカナダのプレーの全てがひどすぎる、とい事ではないと思う。

ただ、一度でも明らかにファールになる様激しい接触プレーを起こしてしまったら、次からは、選手の安全のためにも、SOTGという意味でも、それを避ける様にすべきだと思う。

だが、カナダ(の一部の選手は)危険なプレーを避けようとせず、繰り返しアグレッシブなダイブディフェンスを試みた。
しかも、日本人選手に怒鳴りつけたり、握手を拒否したり、と明らかにSOTGに反する行為を行っている。

残念なのは、一部のこうした行為のせいで、注目されるべき世界トップレベルの日本vsカナダの試合の評価が台無しになってしまうことである。(このゲーム、試合自体はダブルゲームポイントで決着がつく素晴らしいものだった)

ただ、そういった選手もいつもこういう行為に出るわけではなく、そこに至るまでの布石というか、原因がそこにはあった様に思う。(繰り替えすが、それでもカナダ選手の行為が正当化される訳ではない)

まず一つ言えるのが、言葉の問題。

日本の選手には英語を話せる人が少ないため、コールがあると、相手の意見を一切聞かずに、自分の意見をとにかく主張したり、ワンバックを求めたりするケースが少なくない。

これが、相手選手に誤解を与えることがある。

SOTGの中には、相手を尊重するということも含まれており、そのためには、まず相手の意見を聞くということが第一歩(そのうえで、反論があればきっちりするべき)なのだが、これがないと、相手は議論を一方的に拒否されたと思ったり、見下されたと感じてしまうのである。

上記にあげた日本のプレーでは、カナダ選手が苛立っている様子が見て取れるし、この他にも似た様なことがあったのかもしれない。

しつこい様だが、これが原因だからといって、カナダのプレーが正当化される訳ではない。
ただ、こんな試合はプレーしている選手にとって危険だし、見ている人も全く楽しくない。
できれば、避けたいものである。

先日発表された世界大会のSOTGスコアでは、総合平均12.40点という高得点を出しているので、日本チームのSOTGは素晴らしいと言えるが、もし改善できるところがあれば、この言葉の問題は一つあるのだと思う。

この試合の議論の中で、審判やオブザーバー制度を取り入れるべきだ、という意見も多くあったのだが、WFDF会長のラウチ氏が出した声明の中で、これ(審判やオブザーバー制度の導入)を明確に否定したうえで、WFDFとしてはSOTGを尊重して、セルフジャッジの原則を守っていくとの立場を示している。

また、カナダ代表となったフュリアスジョージはその公式サイトで、正式に謝罪を行った。

確かに、この試合は問題があったかもしれないが、世界大会の多くの試合ではSOTGは尊重されていた。

理想論かもしれないが、自分もWFDFの姿勢を支持したいと思う。

そして、自分も改めてSOTGを尊重していこうと思った。
posted by Ultimate Challenger at 10:55| Comment(6) | TrackBack(0) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ひとつ、付け加えさせてください。

何かとSOTGが・・・と言われる今日この頃ですが、ルールの解釈の違いから生じる問題も多々と思います。ルールの解釈の違い程度なら、まだしょうがないと思うのですが、明らかにWFDFルールではなく、独自のローカルルール(?)をチーム一丸となって適応させようとすることはいかがなものでしょう?

セルフジャッジでゲームを行う以上、全選手がルールをきちんと理解してゲームに臨むことは必要最低限のマナーとでも言ってよいと思いますし、仮に1人や2人が多少の理解不足があってもチームできちんとそれを正すという行為があってもよいものと思います。

セルフジャッジを尊重するのであれば、SOTG同様、ルールについても理解を深める努力を選手個人レベルで行っていく必要もあると思います。

今回のWUGC2012参加者のうち、ルールブックにきちんと目を通し、詳細について理解を深めようとした選手は、さてどのくらいいたのでしょう?あるいはチームとしてルールの認識について調整(ローカルルールとWFDFルールの違いを認識するなど)をきちんとやってきたチームは何チームあるんでしょう?
Posted by K at 2012年08月16日 11:46
世界大会、お疲れ様でした。
僕はSTAFFとしてWUGCに参加させていただいてました。
ウィメンズの試合(vs カナダ)でも、SOTGタイムアウトはありました。

第三者から観た、どちらのチームが良い、悪いというのは置いといて…

セルフジャッジのスポーツであるアルティメットは、選手間でその都度ジャッジしてゲームを進めて行きます。そこに選手間の協議は絶対的に必要となります。
となると、アルティメットの共通言語である英語での会話力は、国際試合に参加するにあたって、必要最低限の条件となるかと思います。
国や地域によって、若干ルールの解釈が違ったチームが集まるのですから、英会話力は必要条件であるべきです。

プレーに対する意見(見解)が食い違った時に、協議を疎かにして、当たり前のようにワンバックからリスタートしようとする…日本チームにはこの流れが多いように感じました。

「もめないこと」ではなく、「お互いが納得した形でゲームを進めること」がSOTGだと思います。

今後、日本代表チームには、英語による相手チームとの協議ができる選手を最低1人は必要だと思います。
Posted by しんじょー at 2012年08月16日 12:39
堺では少しでしたが、挨拶できて嬉しかったです。フィンランドの熊谷です。カナダ対アメリカのビデオ、フィンランドでも噂になっているので少し長いですがコメントさせてもらいます。

今回、僕らフィンランドのオープンはカナダとも日本(2試合)とも対戦し、すべて完敗でしたが、対戦した人間としての感想とはYoutubeで言われているほどひどくはないのでは?と思います。北米プレーヤーにはしょうがないかとも思います(いくつかのプレーをのぞいで)。

フィンランドの選手でも、アイスホッケー経験者はガツガツぶつかってきます。手でもつかんできます。もう体に染み付いているらしいです。北米ではバスケやアメフト経験者もかなり多いと思いますので、アルティメットでは原則ボディーコンタクトが禁止されていてもガツガツ体をあてていく選手は多いでしょうし、ボディーコンタクトがあってもいちいちファールを取らない相手選手も多いはずです。それに、オフェンスからすると体をガツガツあてて、何でもかんでもダイブで止めようとするディフェンダーのほうが抜きやすいというケースも多々あります(現に吉川さんは、とてもしつこいカナダのアジア系ディフェンダーを何度もうまくバランス崩して抜いてます。あのディフェンダーもガツガツ当たってきてたはずですが、いちいちファールを取らず、ボディコンタクトをうまく利用して吉川さんは相手のバランスを崩していたように見えます)

確かにカナダ対日本の試合には明らかにわざとぶるかっているプレーがあるので、それは褒められたものではないと思います。でも、Youtubeでああいう風にビデオにまとめられると、何だかカナダのプレーすべてが悪質なような印象を受けてしまいますよね。でも、本当に悪質だったかどうかは倒された後の日本の選手の対応で何となく分かる気がします(例えば宮部さんは倒されてますけど、そのプレー自体にはファールコールしていない=彼の中ではあくまでも流れの中でカナダの選手が飛びついただけと感じたのでは?ビデオで見ると悪質に見えてしまいますが...。他にも、ビデオで見ると汚いように見えますが、日本の選手がすぐにファールコールしてないプレーは当事者同士の中では流れの中でぶつかってしまったものという理解だったのでは?)。

明らかに悪質かつスポーツマンシップに欠けたプレーもいくつかあったので、全面的にカナダの擁護をするわけではないですが、実際に対戦した相手としてはカナダのディフェンスはすごくガツガツ当たってきたものの、悪質なものは少なかったのも事実です。カナダ対日本戦は様々な理由でアドレナリンが溢れ出しているカナダの選手(特に数人)が少し我を失った結果なのではないかと(もちろん、カナダは僕らに対して大量リードしていたので死にものぐるいで止める必要がなかったというのは十分あると思います)。

むしろもっと注目されるべき点は、相手があれだけ殺気立った状況でもきちんと勝った日本代表の冷静さと、相手に流されずに自分たちのプレースタイルを貫いた点だと思います。フィンランドのプレーヤー達にはカナダのチームの悪い点を見るのではなくて、日本チームの良い点を見るように僕は伝えています。

上の方達がコメントしているように、セルフジャッジスポーツが成り立つよう、各プレーヤーが責任を持ってルールを熟知することや海外の選手とコミュニケーション図れるように英語を学ぶなど、体を鍛えるだけではなく、頭や心のトレーニングもとても重要だと言えますね。僕も頑張らないと。

長文失礼しました。
Posted by 北欧メッター at 2012年08月16日 15:53
Kさん

コメントありがとうございました。

ルールの解釈の違いはそれこそSOTGの精神に則り、お互い話あって妥協点を見つける必要がありますが、仰られてる様な(WFDF)ルールの不理解はチーム・選手に多いに責任があると思います。

ルールブックのSOTGの記述には、「ルールを熟知していること」とありますので、ルールの不理解はSOTGに反していることにもなります。

論点を絞るため、本文ではあえて触れませんでしたが、日本vsカナダ戦の8-8の場面で、(トラベル)ルールの確認のため、試合が大きく中断するというシーンがありますが、これを引き起こした選手・チームは責任を感じるべきだと思います。

余談ですが、いつもはWFDFルールとは若干違うUSA ULTIMATEルールでプレーしているアメリカ代表は全体的にSOTGスコアが良く、特にオープンは大会では優勝し、さらにSOTGでは13.20点という高スコア(部門4位)を獲得しています。

彼らに関していえば、ルールの違いを良く勉強してきているのだと思います。

ルールの違いがある、ない、に関わらず、ルールの熟知を心がけることは、SOTGの精神に照らしても、大切な行為の一つと言えると思います。
Posted by アルティメットチャレンジャー at 2012年08月17日 07:00
しんじょーさんへ

コメントありがとうございます。
また世界大会ではスタッフお疲れ様でした&ありがとうございました。
試合もあり、ゆっくり話す時間がなく残念でした&すみませんでした。

ルールブックのSOTGの項には、「明瞭かつ簡潔に意見を述べること」と「相手チームの意見をしっかりと聞くこと」と書かれているのですが、仰るとおり日本のチームは言葉の問題もあり、これをすっ飛ばしてしまう傾向があるんですよね。

これは同じ項に書かれている「他者に敬意を持った言葉遣いを心がけること」に反していると相手に取られてもしょうがない部分もあります。

だからと言って、これに対する報復的な行為が(万が一されたとしても)許される訳でははありませんが。

ただ、日本チームとしても、改善できる部分はあると思うので、両チームの選手を話し合いを仲介することができる協議役を定める必要があるのでは、というのは自分も考えていましたので、大賛成です。

いずれにしても選手・観客・全ての人がプレーしていて、見ていて、関わっていて、気持ちの良い試合が出来る様にしていきたいですね。

それがひいてはアルティメットの発展・普及に繋がるのだと思います。
Posted by アルティメットチャレンジャー at 2012年08月17日 07:11
北欧メッターさん

コメントありがとうございます。
世界大会では、話す時間はわずかでしたが、同年代の選手がオープン部門で頑張っているのを見て多いに刺激を受けました。

さて、仰るとおり、カナダのプレー(だけ)をまとめた動画は視点が偏っていると思ったので、本文では敢えてリンクの掲載のみにしていました。

また、フィジカル度合いに関しては、SOTGを見る限り、フィンランドとカナダは同スコア(2.10)ですので、総合的には取り分けてひどかったと言う訳ではなく、あの試合では、一部のカナダ選手が興奮しすぎてしまった、とという感じなのだと思います。

実際、日本チームの何人かに直接聞いたのですが、試合の全体の雰囲気は悪くなかったという話も聞きました。

とは言っても、一部のカナダ選手のプレーや行為は(多くの人にとって)目に余るものであったのも事実で、ご指摘の通り、それに対する日本チームの冷静さは素晴らしく、世界中の多くの人が賞賛されています。

ただ、これは推測の域を出ませんが、大きな文句も言わず(言えずに)にいつも通りプレーする日本人だからこそ、相手が増長してしまった、とも言えるかもしれません。(一義的な原因はあくまでカナダチームですが)

日本以外のチームではあれば、たぶん2つ、3つこういう行為をされた段階でSOTGタイムアウトなり、トーナメントルールグループに報告するなり、強い抗議があったではないかと思っています。

SOTGは奥が深いですね。
自分も北欧メッターさん同様、頑張らねば、と思いを新たにしました。
Posted by アルティメットチャレンジャー at 2012年08月17日 07:32
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